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る。この方式では、浮力の変動からエネルギーを抽出するので波の周期と波高から力学計算によりエネルギー利得が算定されるため、高効率のシステムの設計が容易である。しかしながら、波の進行方向の問題、エネルギを取り込む可動物体に重量と浮力の差に基づく鉛直力が作用すること、そしてこの鉛直方向の作用力が変動する、という重大な問題がある波の進行方向と可動物体の運動の向きと一致しない場合、可動物体とその運動の支点部分に捻れ力が作用する。また、可動物体に鉛直力が作用するとふつうの構成ではトルク伝達軸に常に曲げモーメントが作用し、しかもそれが水面変動により変化する。この他、可動物体に作用する鉛直力が変動すると、システムを全体支える地盤が変動荷重を受けることになる。このように、従来の可動物体型は、有害な拘束力を発生させ、構造体としての強度の問題をはらんでいる。
3. 新しい提案
ここで新しい方式を提案する。このシステムは上記の分類では可動物体型に属するが、可重力物体型のネックである有害な拘束力の発生を回避でき、設置場所や波の進行方向の制限がない。その概要はFig.1に示すようである。浮体と釣合錘を引張部材の両端に取り付けておき、引張部材をプーリに巻きかけて吊り下げると、水面の昇降によりプーリは交番回転連動をする。ラチェット機構を用いてこの運動を互いに逆向きの1対の定方向回転運動に変換し、2つの出力軸の運動として取り出す。これを基本要素とし、複数の基本要素を連結する。そして、すべての基本要素からの回転エネルギーを総和したのち、一つの向きの回転運動にまとめた上で変速機により増速して発電機を回す。この方式では、動力である回転モーメントの軸を短くすることができるため、強度上の問題は基本的に引張部材、プーリ支持部分、系全体の支持部分についてクリアすればよい。また、機械部分が水面より上方にあること、および可動浮体と動力伝達要素が切り離されていることのため、部品の交換が容易である。設置方法としては、橋脚状のものに支持台を載せてその上に設置しても良いし、船体状浮体の両側に張りだした部分に支持台を載せてその上に設置しても良い。また、ベイブリッジなどの橋梁の下部付帯施設として設置することもできる。

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Fig.1 Schematic view of the system

4. 実験装置と実験方法上で提案した方式の模型を製作し、簡単な性能試験を行った。実験は日本文理大学海洋工学実験場の平面造波水槽で行なった。模型は4基本要素で構成した。なお、波のエネルギーを互いに逆向きの1対の回転運動に変換して最後に一つの方向の回転連動にまとめる方式であるが、装置の都合上片方の回転運動のエネルギーを取り出すようにしている。その後変速機で増速して発電用直流モーターを回し、この端子に接続した抵抗器の両端の電圧を測ることにより発生するエネルギーを求めた。装置平面図の概略をFig.2に示す。浮体は外寸0.51m×0.51m×0.45mの正方形底面の直方体を基本とし、この外側に補助浮体を取り付けて浮体の喫水面を0.51m×1.11mに変更し得るようにした。水面上昇時と下降時に

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Fig.2 Outline of the model

 

 

 

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